Ethereumの新標準 ERC-4337 を徹底解説

LeeMaimai

/2025年8月22日

キーストーン

• ERC-4337は秘密鍵に依存しないスマートウォレットを可能にする。

• ユーザーは多要素認証やソーシャルリカバリー機能を利用できる。

• Paymasterにより、ETHなしで取引が可能になる。

• 開発者はWeb2的なログイン体験を提供できるようになる。

Ethereumは日々進化を遂げ、ブロックチェーンウォレットの体験も、よりシームレスで安全、かつ直感的なものへと変わりつつあります。その最前線にあるのが、新たな標準規格 ERC-4337。これは、真の意味での**アカウント抽象化（Account Abstraction）**を実現する画期的な仕組みです。

本記事では、ERC-4337とは何か、その仕組みや利点、そしてユーザーや開発者に与える影響について、わかりやすく解説していきます。

ERC-4337とは？

ERC-4337は、Ethereum上でアカウント抽象化を実現するための新しい標準仕様です。この規格によって、従来のように秘密鍵ベースで動作する「外部所有アカウント（EOA）」に頼ることなく、スマートコントラクトとして構築されたウォレットを活用できるようになります。これにより、高度なセキュリティ機能や柔軟な操作性を備えた「スマートウォレット」が実現可能になります。

従来のEthereumでは、「EOA」またはスマートコントラクトアカウントという2種類のアカウントしか存在せず、それぞれに制限がありました。しかしERC-4337では、Ethereumのベースレイヤーを変更せずにアカウント抽象化を実現。これにより、より自由度の高いウォレット設計と優れたユーザー体験が提供されます（参考リンク）。

ERC-4337の仕組み

ERC-4337は、新しいトランザクション処理フローと専用コンポーネントによって成り立っています。主な要素は以下の通りです：

UserOperations（ユーザー操作）
　従来のトランザクションではなく、「UserOp」と呼ばれる操作指示をユーザーが自身のスマートウォレットで署名・送信します。
代替メモリプール
　UserOpは通常のEthereumトランザクションとは別管理されるメモリプールに蓄積されるため、ネットワーク混雑を避けつつ柔軟な処理が可能になります。
バンドラー（Bundlers）
　複数のUserOpをまとめて1つのトランザクションとしてEthereumネットワークへ送信する役割を担うエンティティ。送信時にはEntryPointコントラクトを通じて処理されます。
EntryPointコントラクト
　各UserOpが正しく署名されているか検証し、それぞれに設定されたロジック通りに処理を実行するスマートコントラクトです。
ペイマスター（Paymasters）
　ユーザーに代わってガス代を支払うことができる契約。これによってユーザーはETHを持っていなくても取引が可能になります（参考リンク）。