トークン化の本質を理解する:DTCCモデルと直接保有モデル、その違いとは
キーストーン
• DTCCモデルは市場インフラの効率化を目指す。
• 直接保有モデルは証券の所有権を根本から変えるアプローチ。
• 2025年には新たなトークン化サービスが開始される予定。
• 投資家は自己保管体制を強化する必要がある。
過去2年間で「トークン化」は、暗号資産業界のバズワードから、大企業の会議室でも議論されるテーマへと進化しました。しかし、すべてのトークン化が同じ意味を持つわけではありません。米国における株式や投資信託のトークン化の多くは、DTCCによる市場インフラの近代化に関するものである一方、直接的に証券の所有権をブロックチェーン上に移す試みも進められています。本記事では、これらの違いが2025年になぜ重要になるのかを明らかにし、投資家や開発者がどのように備えるべきかを解説します。
同じ「トークン化」でもアーキテクチャが違う
DTCCモデル:市場インフラのデジタル化
DTCCは、米国証券の法的な所有者を変更せずに、清算・決済・データ配信といった市場の裏方の仕組みに分散型台帳技術(DLT)を段階的に取り入れています。例えば、プロジェクトIonではDLTを活用した代替決済レールを試行し、Smart NAVでは投資信託の時価・利回り情報をオンチェーンで公開する取り組みを進めています。いずれの場合も、公式な記録は依然としてDTCの従来システムで管理されており、最終投資家は証券会社などの仲介者を通じて「ストリートネーム」で保有し続けます(参考:dtcc.com)。
直接保有モデル:証券そのもののトークン化
このモデルでは、発行体の株主台帳(またはトランスファーエージェントの台帳)自体をブロックチェーン上に構築し、投資家がオンチェーンでの法的所有者になれる仕組みです。実際、米国の法人法(特にデラウェア州のDGCL)では2017年の改正により、「分散型電子ネットワーク上での株主台帳の管理」が認められており、証券のネイティブなデジタル化に法律的な道が開かれています(参考:legis.delaware.gov)。
本質的に、DTCCモデルが「裏側」の仕組みの効率化である一方、直接保有モデルは「所有権」のあり方を根本から変えるアプローチなのです。
DTCCが変えるもの、変えないもの
決済スピードの向上とリスク削減
2024年5月28日から、米国株式市場はT+1(取引翌日決済)へと移行し、相手先リスクや資本拘束が軽減されました。しかしこれは既存のDTCCインフラ上で実行された規制変更であり、株式自体のトークン化ではありません。移行後も市場は安定しており、失敗取引の発生率もおおむね変わらずです(参考:sec.gov)。
DLTの活用は「効率化レイヤー」、記録台帳の置き換えではない
プロジェクトIonでは、T+0〜T+2の決済が可能なDLTプラットフォームを構築していますが、あくまでDTCの元帳が公式記録です。またSmart NAVは、Chainlinkを通じてファンドデータを複数のチェーンに配信する実験を行いましたが、証券をパブリックチェーン上のトークンに変えるものではありません(参考:dtcc.com)。
2025年12月には新たな試みが
DTCCはSECから「アクションなし意見(no-action relief)」を取得し、DTCが保管する実証済み資産に対して、トークン化した“権利”を許可されたブロックチェーン上に記録する試験的サービスを開始します。ただし、これは投資家が上場株式を自己保管するという話ではなく、証券参加者間での権利移転を24時間可能にする市場インフラの革新です(参考:dtcc.com)。
結論
DTCCモデルは、既存制度の速度・耐障害性・連携性を高める方向性であり、記録の公式性を担う仕組み(トランスファーエージェントや中央保管機関)の置き換えや、個人ウォレットによる保有へ移行するものではありません。「ストリート名義」と「名義書き換え登録持分」の違いについては、SECの投資家向け資料をご参照ください。
直接保有モデルの現実
直接保有型では、発行体のキャップテーブル(株式の発行状況や保有者の一覧)はブロックチェーン上にあり、移転は公式な株主台帳の更新として処理されます。多くの場合、スマートコントラクトで規制されたトランスファーエージェントが介在し、株主対応・配当・制限付き譲渡・トークン化現金との瞬時決済(アトミック決済)などが可能になります。
デラウェア州法人法(DGCL)では、印刷可能な証拠と法定機能を満たす限り、パブリックチェーンまたは認可型チェーン上での記録を容認しています(参考:legis.delaware.gov)。
現状、大手上場株式はこのモデルでは発行されていませんが、トークン型ファンドやトレジャリー(米国債)では先行事例が出てきました。最も象徴的なのは、ブラックロックのBUIDLファンドで、2024年にEthereum上で発行され、2025年にはSolana対応のクロスチェーン対応クラスも追加されています。これらは上場株ではありませんが、オンチェーンの所有記録と分配のプログラマビリティを体現しています(参考:wsj.com)。
比較表:DTCCモデル vs 直接保有モデル
2025年、この違いが重要になる理由
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政策とインフラが一体化へ
T+1が安定稼働した今、業界は同日決済や24時間トレードを視野に。DTCCの「トークン化権利」パイロットは、既存制度内での流動性と担保移転の可能性を広げるものです。 -
トークン化されたキャッシュ類資産が急伸中
トークン化された米国債は、オンチェーン担保・資金運用ツールとして人気上昇中。2025年12月時点で流通残高は90億ドル近くに達し、ブラックロックやフランクリン・テンプルトンが積極展開中です(参考:app.rwa.xyz)。 -
グローバルな設計図が明確に
中央銀行や市場インフラは、準備資産・預金・政府債といった資産を1つの共通台帳上で連携させようとしています。BISが描く「統合型台帳」のビジョンは、証券取引におけるマネーと資産の即時決済の未来を示しています(参考:bis.org)。
実務的視点からの対応策
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DTCCモデルと統合する場合
- DTCが「公式な記録台帳」である点を前提に、許認可型チェーン接続APIなどを用意
- 小売投資家の自己保管ではなく、参加者間でのリアルタイム担保・権利移転モデルを志向
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直接保有型トークン化を目指すなら
- 弁護士や登録済みトランスファーエージェントと連携し、DGCL §224に準拠したオンチェーン株主台帳を構築
- KYC/AMLや譲渡制限、ロックアップなどのコンプライアンス機能をトークンに組み込み、対応ウォレットの整備も重要
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投資家体験の違い
- DTCCモデルでは、証券会社から届く口座明細が所有証明であり、議決権は仲介業者経由
- 直接保有モデルでは、有資格ウォレット内で所有し、チェーン上で配当や議決権を直接取得可能(例:BUIDLファンド)
よくある質問(FAQ)
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NYSE上場株をEthereumに載せるイメージ?
違います。現在のDTCCの試験プログラムは、既存制度との並行運用や、DTC権利のトークン化にとどまっており、公開チェーンで直接保管する上場株トークンとは異なります。 -
両モデルは共存可能?
可能です。DTCCモデルは既存インフラの効率化とリスク管理、直接保有モデルは発行体主導のプログラム可能性と即時決済の実現に対応。BISの「統合型台帳」構想でも、それぞれのトークン資産の連携が想定されています。 -
今注目すべき現実的なユースケースは?
国債やマネーマーケットファンドなどのトークン化キャッシュ資産。2025年は複数チェーン対応の展開も進み、機関投資家の採用が加速しました(参考:prnewswire.com)。
セキュリティと自己保管:直接保有の備えとして
発行体がオンチェーンでの所有者登録を認める場合、最も重要なのは鍵の管理です。ハードウェアウォレットにより、オフラインでの秘密鍵保管、オープンな検証、マルチチェーンサポートが可能になり、投資家はガバナンス参加・合法的な譲渡・トークン資産の自己保管を安全かつ直接的に行えます。
OneKeyのようなハードウェアウォレットは、直接保有モデルに適した自己主権型の鍵管理とマルチネットワーク対応を備えています。トークン化されたRWA(実世界資産)や株式プログラムを検討している発行体は、鍵のハードウェア化とポリシーベースの署名フローを必須要件とすることで、運用リスクと第三者リスクを最小限に抑えながら、ユーザー体験を維持できます。
参考資料一覧
- DTCC プロジェクトIon概要と「並行稼働」整理
- Smart NAV パイロット:信頼性あるファンドデータをブロックチェーンへ
- SEC公式:米国T+1導入に関するプレスリリース
- DTC 2025年のNo-action letter報道
- SEC投資家向け資料:ストリート名義vs直接登録
- デラウェア州法人法(2017年改正)
- BlackRock BUIDL ファンド情報とSolana拡張
- RWA.xyzのトークン型米国債ダッシュボード
- BISレポート:統合型台帳とトークン化アセットの未来
用語の理解が正確であれば、開発者と投資家は適切なアーキテクチャ、管理モデル、保管戦略を選ぶことができます。DTCCが目指すのは既存市場の効率化と安全性向上、直接保有が実現するのは「真の所有」をブロックチェーンに刻むことです。両者が交差する時代の中で、データ管理・ウォレット戦略・コンプライアンス体制を選び抜きましょう。もし直接保有モデルを見据えるなら、今から自己保管体制を強化しておくことが鍵となります。



